株式投資を始める場合は、利益や分析ツールに注目しがちですが、利益の種類と税金についても理解しておくことも大切です。
そもそも一定の利益を得たら、株式投資で得た利益のうち数~数10%を納税しなければいけません。株式投資では、売買による利益だけでなく配当金や株主優待と呼ばれる利益もあります。そして、それぞれの利益は仕組みが異なるだけでなく、税金の種類も異なるので分かりにくいでしょう。
確定申告の時期になってから準備を始めていては遅いので、株式投資を始める前にそれぞれの項目について確認・理解しておくことをおすすめします。
そこで株式投資の基本は理解できても税金は苦手な方に向けて、分かりやすく利益の仕組みと種類、税金について解説していきます。
株式投資で得られる利益とは?
株式投資で得られる利益は、売買益と配当金、そして株主優待の3種類です。
中でも、特に売買益は多くの投資家にとって頻繁に関わることです。
株式投資の売買益
株式投資の売買益とは、株式の売買で得た利益のことを指します。たとえば1株100円で購入し、120円で売った場合20円の利益が発生します。
つまり決済注文(売却注文もしくは買い戻し)を行い、利益が確定した段階で課税対象になるため、取引記録を付けるのが大切です。
また、実際の取引では、証券会社が設定した取引手数料があるため、手数料を含めて損益計算しなくてはいけません。
たとえばSBI証券の場合、こちらです。
- スタンダードプラン:1取引に対して掛かる手数料プラン、50~973円(税抜き)
- アクティブプラン:1日の取引金額に対して掛かる手数料プラン、10万円まで無料・10万円を超える金額から191円~400円(税抜き)。100万円増加ごとに400円追加
株式投資の配当金
株式投資の配当金とは、株式を発行している株式会社が自社で得た利益の一部を、投資家へ還元したものです。
配当の回数は企業によって異なりますが、一般的に1年間に1回もしくは2回配当金を受け取ることができます。
配当金の金額は、配当利回りと呼ばれる数値で計算されているのが特徴でしょう。配当利回りとは、投資家が投資している金額に掛ける数値で以下のような計算方法です。
- ・投資家が購入した株式×配当利回り=配当金
配当利回りの数値は企業によって異なりますが、多くは2%~3%の間で設定されています。
例)配当利回りの計算方法
- 1株配当金10円÷1株の株価300円=約3%
- 1株配当金10円÷1株の株価600円=約1.6%
- 1株配当金10円÷1株の株価1000円=約1%
このように配当利回りが高くなるほど、同じ配当金でも安い株価で購入できます。反対に配当利回りが低くなるほど購入コストが高くなります。
つまり配当利回りの高さが意味することは、「少ない投資金額でより多くの配当金を分配されるかどうか」の目安です。
配当金を得るために投資を始める場合は、なるべく配当利回りの高い銘柄から選ぶのがおすすめですよ。
株主優待
株主優待は売買益や配当金とは大きく異なり、物品やサービスを受けられる制度です。また、対象者は一定期間指定以上の株式を保有していた投資家で、自社製品やサービスなどを費用負担なしで受け取ることができます。
株主優待の目的は、株式を購入・保有してくれたことへの感謝を示したもので、株式の保有数によって優待内容も変化する企業があります。
株主優待は少額投資や短期投資では難しいので、優待を受けたい時は一定金額の投資資金を準備したり、長期投資に切り替えたりすることが必要です。
株主優待例を以下にご紹介します。
- 日本マクドナルドホールディングス:無料引換券の付いたシート6枚1冊(保有数に応じて冊数が変わる)
- 明治ホールディングス:自社製品の詰め合わせ(保有数に応じて内容が変化)
株式投資に掛かる税金とは?
続いて株式投資に掛かる税金を、利益の種類に分けて解説します。株式投資に掛かる税金は、各利益によって変わるため、間違えて覚えないようにしましょう。
また、納税は義務ですので、投資を始める前に覚えることの中でも優先的に押さえるのが大切です。
売買益は譲渡取得が掛かる
株式の売買で得た利益については、所得税の中でも譲渡所得と呼ばれる区分で税金が掛かります。
譲渡所得は、他の所得税とは別に計算する「申告分離課税」と呼ばれるものが適用されます。たとえば雑所得の利益と合わせて計算するのではなく、雑所得と譲渡所得は別々に課税所得や税金を計算する決まりです。
ちなみに雑所得の一例はこちらです。(会社員を前提としています。)
- フリマアプリで商品を売る
- イラストの作成・販売
- オークションサイトで取引
- ポイントサイトでポイントを円に換金
- ウェブデザインを請け負う
ちなみに会社員ではなく、自営業および個人事業主としてウェブデザインやイラスト制作をしている場合は、事業所得に該当する可能性があります。雑所得に当てはまる業種は、人によって状況が異なるため、1度税務署にて相談するのがおすすめです。
そして譲渡所得の税率内訳を、以下にご紹介します。
- 所得税15%
- 住民税5%
- 復興特別所得税2.1%(令和19年まで)
そして上記3種類の税率を足した上で、納税額を計算するので合計税率22.1%です。
以下の計算式で譲渡所得を求めます。
- 利益-取引に掛かった費用=所得
- 所得-控除=課税所得
- 課税所得×22.1%=課税金額
●配当金は配当所得が掛かる
株式投資の配当金には、譲渡所得ではなく配当所得と呼ばれる所得区分に該当します。配当所得は、法人企業から利益の配当を受け取った際に掛かる税金です。
譲渡所得と同じく申告分離課税が適用されるので、配当所得のみで課税所得などの計算ができます。
そして配当所得の税率内訳には、上場と非上場で異なります。ちなみに上場企業とは株式を公開して一般の投資家も売買できる状態を指します。一方非上場企業は、社長や親族などが株式を保有している状態で、一般の投資家には非公開・売買できない状態です。
- 上場企業の株式:所得税15.315%、地方税5%
- 非上場企業の株式:所得税20.42%
配当金の利益が発生した日は、原則、株主総会で配当金の支払いを決定した日としていますが、後述で解説する特別口座(源泉徴収あり)の場合は証券会社から交付された日です。
更に配当所得は譲渡所得と異なり、申告不要制度と呼ばれる確定申告しない選択肢も用意されています。
申告不要制度は、上場企業株式の配当金に限られていますが(申告不要制度は非上場株式の配当にもあるが、住民税の特別徴収が無く総合課税に切り替わる)、一切申告しなくても問題ない状態になる仕組みです。
株主優待にも雑所得が掛かることもある
物品を受け取ったりサービスを受けたりできる株主優待の場合は、原則、確定申告は不要です。しかし、以下のような状況の方で株主優待を受けている時は、確定申告の必要性が出てきます。
- 確定申告が不要なパターン:給与所得を受け取っていない
- 確定申告が必要なパターン1:給与所得(退職所得も含む)以外の年間所得が20万円を超える。また、雑所得のみで20万円を超える計算の場合。
- 確定申告が必要なパターン2:年収2000万円を超える給与所得や、複数の給与所得がある場合。
雑所得とは、譲渡所得など特定の所得区分に該当しない所得のことで、総合課税が適用されます。総合課税とは、他の総合課税に該当する所得区分と合わせて計算する仕組みです。
また、以下のような税率内訳です。
- 住民税10%
- 所得税5~45%(各税率に控除額あり)
特徴は所得税の税率で、所得額に応じて税率と控除額が変動します。たとえば195万円以下の雑所得は5%ですが、4000万円超えでは45%です。
他の所得と異なり、税率が上がるシステムですので株主優待を受ける際は、課税額についても確認しておくことをおすすめします。
③株式投資の確定申告に関する負担は軽減できる
株式投資に掛かる税金や確定申告が難しいと悩んでいる方に向けて、負担を少しでも軽減できる制度をご紹介します。
また、株式投資で損失が発生した場合に役立つ、損益通算についても知っておきましょう。
特定口座を選ぶ
多くの投資家は、株式投資の売却益で発生する譲渡所得が主な課税所得でしょう。しかし、多数の取引がある方ほど、各取引の課税金額の計算回数は増え、内容も複雑になってしまいます。
そこで源泉徴収ありの特定口座へ、切り替えを検討してみてはいかがでしょうか。現在源泉徴収ありの特定口座ではない場合でも、切り替え手続きを進められます。しかし、適用されるのは翌年になるので、今年分の確定申告については投資家自身で準備・申告しなければいけません。
特定口座とは、証券会社が年間の取引報告書の作成を行ってくれる制度です。つまり帳簿付けの手間が省けます。更に源泉徴収ありを選択すると、証券会社が確定申告も代行してくれるので譲渡所得に関する帳簿付けから確定申告の作業を任せることが可能です。
補足:源泉徴収ありの特定口座
簡単に説明すると「源泉徴収ありの特定口座」は、取引ごとに税金を計算してくれるだけでなく、納税作業まで証券会社が代理で行ってくれる制度です。
源泉徴収:取引から税金額を差し引く作業。
確定申告:毎年2月から3月に実施される納税手続き。
ちなみに源泉徴収なしの特定口座は、年間取引報告書の作成のみですので確定申告は投資家が行います。
損益通算とは
譲渡所得などには損益通算という制度があります。
損益通算とは、売買によって発生した損失と利益を相殺したり、売買損益や配通算することで税金を抑えたりできる制度です。
また、株式投資で年間を通して売買損失が発生している場合は、最大3年間まで控除繰越できます。(3年間損失を控除として利用し、課税所得を抑える)
例)
- 200万円の損失(1年目)
- 100万円の利益(2年目)、100-200=-100万円となり非課税
- 50万円の利益(3年目)、50-100(前年度の損失)=-50万円となり非課税
【POINT】なるべく株式投資を始める前に税金を理解しておこう
株式投資をこれから始める方は、今回の記事を参考に各所得に掛かる税率やルールについて確認しておきましょう。
また、既に株式投資を始めた方の中で、源泉徴収ありの特定口座に切り替えていなければ、今からでも遅くないので切り替えることをおすすめします。
源泉徴収ありの特定口座は、特に計算の数が多い売却益や損失に関する項目に関して、証券会社が確定申告を行ってくれる制度です。
税金を理解しておくと同時に、手間の掛からない方法を選択しておきましょう。
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